写真家 吉田畔夕(はんせき)(本名:正三)(1902年生–1994年没)
吉田畔夕は、1979年に写真愛好家たちと共に「畔夕会」を創立しました。
写真機材が限られていた時代に、手作りのレンズを用い、スナップショットや絶景を捉え、
常に新しい視点を追い求めました。特に信州の自然に魅了され、
晩年には厳冬の雪景や氷の美しさを敏感な感性で捉えた作品を多く残しています。
また、1959年『カメラ毎日』10月号では、信貴山に住み、
人々にあまり知られていない奈良の仏像や遺跡を丹念に撮影し、
その魅力を紹介する活動が取り上げられました。
このように畔夕は、自然風景だけでなく、地域の文化財や歴史遺産にも深い関心を寄せ、
写真を通じてその価値を広く伝えることに尽力しました。
彼の写真は、年齢にとらわれず常に探究心を持ち続けた姿勢を映し出し、
今なお多くの人々に感動を与え続けています。
畔夕はまた、日本報道写真連盟関西本部理事や奈良県美術人協会委員長を務め、
地域文化の発展にも寄与しました。その功績により地域文化功労賞を受賞しています。
座右の銘である「天狗にならないこと」は、謙虚であり続けながらも、創作に対して情熱を注ぎ
続けた彼の信念を象徴しています。
1979年に創立された「畔夕会」は、平成6年に畔夕が他界したのちもその名を受け継ぎ、
現在も活動を続けています。奈良県内では最も長い歴史を持つ写真クラブとして、
畔夕の精神を受け継ぎながら新たな写真文化を育んでいます。
長らく倉庫に保管されていた畔夕の作品の一部ではありますが、
孫である和美が新たに開設した「ギャラリーわらく」にて、再び日の目を見ることとなりました。
本展示が、吉田畔夕の写真に込められた想いとその魅力に触れていただける特別な機会となる
ことを願っております。
また、これからも、残された作品を多くの方にご覧いただける場を作っていきたいと考えています。
ご来場お待ちしております。